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この1年ほど前から私の考え方が明確になっている項目が少なくとも二つある。 どちらも愛犬相談を受ける時の条件だ。
ひとつは、去勢していないオス犬の訓練は引き受けないこと。 未去勢のオスで、不特定多数の他犬と出会うカフェやペンションなどでも問題なく暮らせる犬の割合は5パーセント以下だとの経験則がある。
・トイレのしつけがうまくできない ・歩行中匂い取りばかりしている ・曳きが強い ・他犬意識が強くて散歩が大変 ・攻撃的な面がある そんな相談を飼い主から受けても、「未去勢なら私には訓練できません」とはっきり答えるようになった。(出来ないわけはないのだが、やりたくないというのが正直なところ)
犬は去勢されていなくても様々な訓練が可能だ。 例えば警察犬・災害救助犬・各種訓練競技犬… でも私が現在行っている訓練と飼い主の方が求める理想像は“何処にでも連れて行ける暮らしやすい家庭犬”であって、それにはオスの場合盲導犬と同様に去勢が絶対条件であり、社会的に『凄い!』と評価されてる前述の使役犬などは指導手の手腕によるところが大きく、とてもドッグカフェでのんびり、なんてことはまずないのだ。
本能によって内から込み上げてくる押さえきれない欲求に根付いているかもしれない問題に対して、どうして完全に止めさせることが出来よう? 根源となるものを除去せずに、本能的行動を抑圧するのは理不尽だし虐待ともいえ、逆に去勢してあるのなら遠慮することなく犬に精一杯教えることが出来る。
だから私はいつも言っている。 あなたはどんなスタンスで犬と暮らしたいのかをはっきりさせなさい、と。 1.繁殖犬・ショードッグなど繁殖機能が不可欠な犬と暮らしたいのなら、マーキングなどトイレの完全なしつけは諦め、ドッグカフェなど不特定の犬が集まる場所は避けるか寛容な店を探すしかない。 2.暮らしやすい家庭犬を望むなら、生後6〜8ヶ月を目処に去勢するのが私の世界では常識であり、それを過ぎてから問題を抱えた方も、年齢にかかわらず何はともあれ去勢しないことには訓練のスタートラインにも立てない。
二つ目はやはりハーネス型胴輪の問題である。 小型犬のみならず最近では大型犬にも使用されているが、この商品について私の独断とするところは、コントロールの放棄の象徴であり、しつけも出来ていない犬にこれを着用するのは『私は愛犬に負担がかからぬことを第一義とし、そのためには制御を放棄して、私がすべての負担を肩代わりし気を配りつつ社会参加を目指します』と宣言しているような代物だ。
だから「困っています」という相談者には、「まずは首輪をしないことにはどうにもなりません」 と、はっきり伝えるようになった。
最後に、5パーセント以下の確率であるが未去勢でも、そこそこOKなワンちゃんはいるものだ。 でも私が次にオスの仔犬を飼ったとしたら、そんな博打には決して出ないと断言できる。
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