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「トイレのしつけのことでお伺いしたいのですが…」 小型犬のその飼い主は神妙な顔で尋ねられた。
会話を交わすうちに今のペットショップやわんこ関連の著名な雑誌、その取材を受けたり寄稿する名ばかりの犬の専門家に対して『諸悪の根源はお前たちにある!』と彼らの表面だけを取り繕ったきれいごとにあきれ果ててしまった。 相談者は教えられあるいは本に書かれた通りを実践してなお困っているのだった。
生体販売などに少しでも関わっている様な連中の目から見れば、犬はイヌで可愛らしくよくできた愛玩生物なのだ。 『ウサギや亀より言葉は分かるし、感情表現も豊かで学習能力があって、だからハイテクの人形よりずっと魅力的。 ただ、生き物だからちゃんと栄養管理に配慮して運動も行い、ワクチンを接種し大切に育てましょう。 それに餌を使って上手に操れば、いろんな芸も覚えるし、吠えたり引っ張ったりすることを止めさせることも出来るんですよ。 すごく賢い動物ですね』 そんな解説を日々行っているようで情けない。
単純で主観だが次の比較について考えていただきたい。
第一期 人:無意識生理的にオムツに排泄をする 犬:母親が陰部を舐めて排泄を促す
第二期 人:ハイハイや摑まり立ちの頃、排泄を意識する 犬:寝床から離れた場所へ移動して排泄する
第三期 人:トイレやおまるでの排泄を親が促す 犬:排便場所に連れて行き、シーシー・ベンベンという言葉で促す
第四期 人:子供が便意尿意を伝える 犬:犬が便意尿意を伝える
第五期 人:自発的にトイレに行き用を足す 犬:我慢するか、家人がいなければ止む無く室内の排泄場所で用を足す
つまり何が言いたいかというと第三期と第四期にどれだけ根気と忍耐とテクニックが必要かで、その根気と忍耐は『人や犬は必ず理解してちゃんと排泄習慣を身につける』という確信があるから生まれるということであり、しかも『シーシー』とか『ウンウン』などの言葉が介在する。
ペットショップでは第二期を狭いケージ内で育て、糞尿にまみれる屈辱を奪い去り、犬のアドバイザーは第四期五期を省みることなくネズミが迷路を抜けて餌にありつくような理論で犬をイヌにして満足している。
赤ちゃんに教える方法で教えることがすべての始まりなのに、そこを間違えるから後に厄介なことになってしまっている。
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