From the North Country

ネット上のふたつの嬉しい再会 2005年03月30日(水)

  ここ数日の間に嬉しいことが二つ続いた。

1月18日付の本欄『若き指導者の集い』は、北海道における視覚障害リハビリテーションの草創期を思い出しながら書いたものだった。
その時、主人公として紹介させていただいた鈴木重男先生が「ひょんなことから」私のHPをご覧になりメールを下さったのだ。
驚きと共に懐かしさが込み上げてきた。
「HPを読んですぐ『あの頃』にタイムスリップしました。あの時の生徒達はもう40歳前後になってますよ」という先生の言葉に時の流れをしみじみと感じた。

視覚障害リハから離れ、重男先生の消息を知り得なかった私は、その時「今もどこかで視覚障害の仕事に関わっておられるだろう」と書いた。
重男先生が現在、道立特殊教育センターの所長をされていると知り、道内の障害児・者の未来は明るい方向へ向かうだろうと密かに思っている。
少なくともセンター職員は最高の上司に恵まれ、やる気を起こしているだろうし、障害児・者と家族は先生の言葉に励まされ、明日への意欲を持たれていることだろうと信じている。
私にとってはそれほどすばらしい方なのだ。

もう一つはアリスファームの藤門さんと宇土さんのこと。
お二人とはもう十数年前『ひょんなことから』知りあうことになった。
以後、時々私の方からアリスファームをお訪ねし、今は亡きビアデッドのパラやゴールデンのモーリーのことで相談を受け、そして現在のスタンダードプードルは私の愛犬だったジョンと散策を楽しんだりもしていた。

盲導犬協会を退職後、日本一周の旅の最後に立ち寄って以来お会いしていないのだが、先日赤井川村にあって昨年閉鎖されたドロームというホテル・キャンプ場のことをネットで調べていたら、彼らアリスファームが経営を引き継いだということを知り、メールアドレスも確認できたので、早速連絡をとり私の現況もお伝えすることができた。

「ホテルのウェルカムドッグは黒ラブの去勢されたオスがいいと思うのですが、どうでしょう?」という返事が届いた。
まだそれに対して返信していないが、今の私なら「避妊されたメスのレオンベルガーがいいと思います。」と答えるかも知れない。

ふたつの『ひょんなこと』から再び出会えたのもインターネットのおかげと、迷惑メールに苦慮しながらも感謝している。
 

長い目で見れるか否か 2005年03月29日(火)

  ひどいモンです。
ガーデンのコンディションは今が最悪だと思う。
ご来店いただく方々には大変申し訳なく思うが、乾いている駐車場のように石ころでガーデンを整備したくないし、アスファルトも嫌だからしばらくはご勘弁いただくしかない。
予報では今後もプラス気温なのに雪が降るのでこの状態は改善されないだろう。
4月10日頃をガーデン開きにしたいと思っている。

そんな中レッスンにやって来たイングリッシュコッカーのリュック君がおもしろい。
コッカーの場合、陽気な性格にも関わらずたまたま飼主や他犬に対して荒っぽい行動をとる例を多く見ていたので、同じ問題で困っているのかと最初思ってしまった。
しかし、リュック君は陽気さのあまり制御の難しさが問題となっていた。
飼主の方が本気であることに気を良くしている私は、ショートレッスンにも関わらず1時間あまりの時間を割いている。
子供と大人の境目である年齢であるリュック君には不満も反発もあるのだろうが、とにかく憎めない愛らしい性格をしている。
飼主の方が早急な結果を求めているなら、私のような訓練士は不向きかもしれない。
ただ私にとっては、ゆっくり育てながら先行きを見てみたいと思えるワンちゃんのひとりだ。

仔犬の頃から私のカフェに通ってうまく育たなかったわんこはいない。
通いきれなかったわんこがいることが飼主と私の反省点であろう。
 

マーキングにみる本能 2005年03月28日(月)

  膝の痛みは去年の今頃病院で貰った薬が見事に当たり、抑えることに成功した。
Kがいない一週間だが、お泊り犬5頭と暮らしているとその忙しさが寂しさを忘れさせてくれると言ったらKは怒るのだろうか?
今夕2頭が帰宅し、他の3頭も生活に慣れてきて私にも自分の時間が持てるようになったので、この欄をちょっと書いてみようと思った。

「おまえのしつけが悪いから室内でマーキングや粗相をするのだ!と旦那に叱られました」
「あれは散歩ではなく、臭い取りとオシッコのためのお付き合いです。お天気の日はまだしも、天気の悪い日はうんざりです」
「元々あるものを取ってしまうのは絶対に許せるものではないって言われるとそれ以上のことは…」
春先になって、去勢していないオス犬を飼っている奥さんからの相談が増加している。

私の経験から言って『男はいつも困り果てないと自分の言い分ばかりを主張する』ものなのだ。
ならば、「去勢しないなら別れてやる!」と言ってやれ!
「きょ、去勢ってあなたのことじゃなくて犬のことよ!」という一言も忘れずに。

オスなら夢精に始まりマスターベーションや交尾は健康な証だ。
ましてや犬にとってのマーキングは旦那が日々出勤するようなものであり、『それを否定されては男が廃るというもんだ』というつもりでやっている。
なのに、今流行りのニートに加え『セックスレスの犬であれ!』と健康なオス犬に理解させるのは無理に決まっている。

数千年か数万年後『日本は亜熱帯の国だった』と歴史学者が言うそうだ。
その答えは、『裸の写真ばかりが出てくるから…』というのがオチ。
耳が痛い男性諸氏は去勢によってせめて愛犬からこの煩悩を開放せしめよ!
さもなくば、家庭を失うことになるぞ!

あなたはペット(家族の一員)として暮らしたいのか、種としての犬(繁殖目的)と暮らしたいのかまず決めねばならない。

別にKがいないから選んだテーマではないことを申し添えておく。
 

泥沼宣言一時撤回! 2005年03月25日(金)

  「お蔭様で泥沼状態はあっという間に解消されました」などと悠長なことを言ってよいものだろうか?
冬に逆戻りの雪と寒さの一日だった。
横なぐりの雪は地吹雪と混ざり合って視界を遮り、終業式を終えて帰路につく子供達は後ろ向きに歩いていた。
ただ、カフェを訪ねてくれた犬たちは久しぶりの真っ白なガーデンで思いっきり取っ組み合いを演じ、汚れる心配をしなくてよい飼主の方も気楽におしゃべりを楽しんでおられた。

さて、今夜はお詫びとおことわりをいくつか。

1.まもなくワールドカップ最終予選で日本とイランの対戦がライブで放映されるので、この欄にテーマを掲げて書く時間が取れません。

2.先日のこの欄に給料日後の週末はヒマだし、ガーデンは泥沼状態だからレッスンができますと書いたが、今日の雪でガーデンは明日も使えそうなのと、昨日の肉体労働(氷割り)で再び膝を痛めてしまったので、恐らく歩行を含んだレッスンはできないものと思われます。

3.夜の楽しみが一週間ほど続くので、その間この欄をお休みするかもしれません。(報告したくなったら別ですが…)

ところで、この欄を書きながら最終回だけを少し見た金八先生は昔のように感動的だった。
初心が『いつ』を表すのかさえもう忘れてしまったが、そのことを考えさせてくれただけでありがたかった。
明日からも大好きな犬たちをその飼主と共に見守っていきたいと思う。

さあ、キックオフ。
 

泥沼宣言! 2005年03月23日(水)

  ガーデンは本日より『泥沼宣言』!

明日の定休日にちょっとはガーデンの氷割りに励みますが、「休みの日にはお湯割りもいいかな?」との思いも捨てきれず、したがって復旧のメドは立っておりませんので、明後日以降ご来店予定の方は『純ドッグカフェ』としてご利用いただくか、それなりの覚悟をしてお越し下さい。

昨日もそのようなことを書いたら、今日はすっかりヒマな一日となり、お蔭様で常連の方と携帯電話のカメラ機能を使って楽しいひと時を過ごさせていただいた。
携帯で撮影した人や犬の頭にカツラをつけたり、笑顔に変えたりできるなんて初めて知った。
凄い時代を生きてると実感した。

凄い時代は携帯だけではない。
話が飛躍して恐縮だが、やはり気候が気になる。地球の健康が明らかに損なわれている気がしてならないのだ。
朝の気温が高すぎるし、ガーデンの変化が札幌にしては早すぎる。冷たい空気と熱い陽射しのギャップが大きすぎる。
アメリカが京都議定書を批准せず、宇宙開発を急いでいるように見えるのはきっとそれなりの理由があるのではないかとつい勘ぐってしまう。

そんなことを考えていたら「ガーデンの状態や地球温暖化を危惧するより、カフェ経営の泥沼化を心配せよ」と、より身近な現実の声が飛んできた。

明後日金曜日は給料日の方が多く、これまでの例で見るとカフェは25日直後の週末から月曜日まで閑散とする。
ならば、これらの日にカフェに来られた方はゆっくり愛犬談義ができレッスンをする時間も取れるかも知れませんぞ!と言うのが私の精一杯の経営努力だ。
 

負け惜しみ 2005年03月22日(火)

  風が強く体感温度は決して高くなかったけれど、ガーデンでは雪解けが進んでいたので、意を決して雪山を吹き飛ばした。
雪の重みで山があった中央部分は幾分陥没しているようだ。
逆に山の周囲は踏み固められて氷状になっており、ガロアラシ号でも歯が立たない。まるでカルデラのようになっている。
このあとはツルハシでの手作業とお天道様頼りになる。
既に2割ほどぬかるみが出現しているので、シーズーのもえちゃんは遊びたがっていたが、飼主の方は初めからそのつもりはなかった。
「そう、ここはドッグランではなくカフェであるからして、ガーデンがいつも使えるとは限らないのだ」
私の精一杯の負け惜しみかも知れない。

駐車場の横に片付けておいた平均台も雪解けと共に側面が見え始めた。
横にしておけばよかったものを、正規の状態のまま雪に埋もれさせていたので、こちらも無残な姿となっているようだ。
横にしてシートを被せておくことを考えなかったわけではない。
「どれくらいの雪が積もるか分からないが、そのままにしておいたら平均台はどうなるだろう?」という好奇心と実証主義の結果だった。
しかし、まさか3メートルも積もるとは思っていなかった。
これも負け惜しみだろうか。

負けず嫌いで完璧主義だった30代の初め頃、まだ幼い我が子3人の誰かが、私の中学時代の思い出だった大切なカセットのテープ部分を部屋中に引っ張り出したことがあった。
私は3人を正座させ「壊れてしまってもうどうにもならないんだぞ!誰がやったか正直に言え!」と怒鳴った。
上の二人が黙ってうつむいていたら、まだ3歳くらいだった下の子が「ねぇぇ、父タンねぇぇ、ショウジキ…ショウジキ…、父タン!掃除機壊れたの?」
私は吹き出してしまい、そして恥ずかしくなった。
「形あるものはいつかは壊れる」義理の祖母はいつも笑い飛ばしながら口癖のように言っていた。

いつの頃からか私も『なんちゃない』と徐々に思えるようになっている。
まだ人生経験が足りないから、負け惜しみになることもあるようだが…。
 

春分の日振替休日に 2005年03月21日(月)

  今日は印象に残る出来事の数々で少々疲れた。

ゴールデンのJクンは右後肢の腫瘍切除で自宅療養していたが、退屈な毎日に嫌気が差して「ボク絶対カフェに行くもん」と、車の前から動かず、とうとう飼主の心を動かし朝一でのご来店となった。

柴犬のハナちゃんは「初めて犬を飼って、齧られたり唸られたりの毎日で戸惑っています」という飼主の家族の方とご来店。犬の性格や家族の状況が分からないから、何をどうアドバイスしてよいか決めかねて適当に喋っていたら、「これからちょくちょく来ます」と先を読んで清清しく答えてくれた飼主さん。
それならうまく支援できるだろう。

「土日にニセコのペンションに行って来ました。ほぼ満室とのお話を聞いていて、他のワンちゃんたちとうまくやれるかとても心配していたのですが、出かけてみるとそこにいたのはこのカフェの常連さんたちばかり。みんなで顔を見合わせて『なあんだ!』と笑っちゃいました」
そう話してくれたのはMダックスプー助・ライムのAさん。

ゴールデンのレオンちゃん宅ではもう一頭のゴールデンを飼うか思案中。
『試し飼い』で昨日から暮らしている生後5ヶ月の名無し君を伴ってカフェに来られた。
「どうでしょう?」と尋ねられたが心はどうやら決まっている模様。あとちょっと背中を押してあげる人でもいたら『即決まり!』の雰囲気だった。
その名無し君を見たカフェの仲間達は「可愛いいっ!」と叫んでおる。
「待てよ?」と私は今になって考えた。
レオン君は来月7日から旅行のためお預り予定。この名無し君を飼うことになればもしや…!?

「引退した盲導犬なんです」そう言って入店されたのは、老犬飼育ボランティアの方。
愛犬の名前を聞くと『テンダー』。
テンダーなら私が函館のフォローアップを担当した犬で、Yさんの盲導犬だ。
この兄弟にはティファニー・テリー・トムなど盲導犬となった犬が多く、母親はレナ、父親が確かレスターだった。
12歳となったテンダーは遅い青春を謳歌するようにガーデンを散策していた。
こんな形で再会するとは12年前には夢にも思っていなかった。
 

お泊り犬は看板犬 2005年03月20日(日)

  毎日何度も両手を消毒しているが、カフェを閉店した後の最後の消毒の時にはその日の出来事をいろいろ思い出すようにしている。
三連休という方も多い中、今日のカフェは時間的な分散が上手くかみ合って、様々なタイプのワンちゃんが訪ねてくれた。

初めてだったり2〜3度目の来店となったワンちゃんの中には、怖いもの知らずの小型犬がいたり、他の犬がどうも苦手なワンちゃんもいる。
しかし、飼主の方はどちらも他のワンちゃんと楽しく遊べる姿を期待しておられるようだ。
そのような犬たちと上手く相性が合う仲間がいればラッキーなのだが、いつもそうであるとは限らない。

こんな時、お泊り犬が役に立つことがある。
今日のカフェでは、小型犬のお相手はチワワのチビちゃんが務めてくれた。
最小犬種のチワワであるが、このチビちゃんはカフェで最も勇猛果敢なワンちゃんで普段はレオンベルガーと暮らしている。
そのレオンベルガーはどんな相手とも上手くやってくれるが、とりわけ力を持て余した大型犬をうまく満足させてくれた。
ハスキーのチェスは荒っぽい相手を身を挺して手なずけてくれるし、サモエドのラブちゃんは遊ぶのが苦手だが、逃げ役に回ってくれてそれはそれで大いに役立っている。

今日お泊りに加わったシーズーののんちゃんは、残念ながらそのような役回りはできない。
家族と離れ見知らぬ犬と一緒にいることが精一杯だから。
それでも前回のお泊りの時より、神経質でなくなったのはいろんな犬たちを安全な状況で見ることができたからだろう。
 

気がかりなこと 2005年03月19日(土)

  そろそろラス前程度にして欲しい積雪だった。
先日までガーデンの雪解けが進み、泥沼出現まで一歩のところだったので、今朝の積雪は内心ありがたい思いもしたが、やはり春・夏・秋は避けて通ることはできない。いずれ迎えなければならない泥沼なら、あと一回の大雪くらいで今冬を終了し、さっさとぬかるんでしまってくれ!
子供の頃、予防接種を受ける列に並びながら同じような覚悟をした思い出が蘇ってきた。

今日のカフェにも「うちの子なんとかならんものか」という思いを込めて一組の夫婦がやって来られた。
シェルティーのバディ君が人や他犬に噛みつかんばかりに吠え立てて困っているという相談をメールで頂いていた。

臆病と聞かされていたが、なんのなんのその突撃精神には結構迫力があり、「これでもか!」と言わんばかりの執拗さを兼ね備えていた。
このような犬の場合、飼主の方が散歩をする時は、人や他犬を避けるようにして歩く姿を見かける。
私のレッスンはその逆で、人や犬を探しながら歩くことになる。
まずは、外に繋がれている犬の前を通り、お互いが吠え掛かるチャンスを逃さず制御する。叱ることはない。ただ制御し、訓練犬が「もういいです」という反応を示すまで繰り返す。
そこから、また別の犬を求めてコース取りを考える。

幸いにも、今日のバディ君のレッスンには様々なチャンスが現れ、こちらが意図することをある程度は伝えることができた。
カフェではご夫婦が驚かれるほど冷静な姿を見せていてくれた。
たぶんこの効果はある程度続くが、決して訓練が終わったどころか始まったわけでもないことを知って欲しい。
私はただ、制御による犬の変化が見込まれるかどうかを試しただけのことであり、訓練をしたわけではなく評価をしたに過ぎない。
一時的な効果で満足してもらえるのはありがたいし、飼主の方が接し方を会得して、その後も順調に過ごせているのならすばらしいことだと思うが、訓練というのは本来、週に5時間行っても12週はかかるものだということも知っていて欲しい。
私自身がそのような訓練を引き受けることはないのだけれど…

私にできることは継続してカフェを利用していただける方との信頼関係を基盤に、愛犬の成長を見守り、適宜必要な助言と制御を行うことだと思っている。
そして付け焼刃的なレッスンを受け、その後の音沙汰がない犬たちがどうなっているのか密かに心配している。
それぞれに事情があり経済的なことも絡むから、どうこう言うことはできないのだが、他にも例えば獣医さんなんかもそのような思いでいるのだろうなとふと思った。
 

Kさんと盲導犬ユーパス 2005年03月18日(金)

  秋田県湯沢市に住むKさん。
子供の頃から少し目が不自由だったが、家族も本人もそれに気がついていなかった。
兄弟は走り回っていたのに彼女はいつも母親の身体に身を寄せながら歩いていた。
甘えん坊だと言われ、自分もそう思っていた。
学校で黒板の字が読めずバカと言われたこともあった。
みんなも同じ見え方をしてると思い、自分が劣っていると信じ込んでいた。
東京に出てカメラ屋で働き始めたが、お使いに行くと側溝に落ち、道に迷っては帰れなくなった。
ドン臭い奴だと皆呆れかえっていた。

秋田に戻って病院で働いていた時、一人の医師がその様子に気付き、検査を受けるよう勧められ網膜色素変性であることがわかった。
周辺視野が狭くいずれ失明すると言われたが、彼女は自分が『甘えん坊でもバカでもドン臭いのでもないのだ』ということに安心し開放されたという。
この病気は成人し30歳位(だったかな?)あたりから一気に進行してしまうことがあるが彼女の眼はそれより10年以上持ちこたえた。

それからの彼女の頑張りと猛勉強には凄まじいものがあった。
函館視力障害センターで5年半の間に点字と鍼灸マッサージをマスターしただけでなく、鍼灸の真髄を研究する分野にまで立ち入り、その深さを私に話してくれたこともあった。
残念ながら入学した時は全盲の方の手引きをするくらい見えていた彼女も、卒業時には視力が無くなってしまったが、彼女の心優しく知的で思慮深い性格は皆から愛されている。

卒業と同時に彼女は盲導犬ユーパスと出会い、湯沢市で開業しながらパソコンを習得しメールのやり取りもできるようになった。地域の学校などで講演を繰り返し社会啓発にも努めている。

盲導犬ユーパスとの出会いや、子供の頃遊んだ山にもう一度ユーパスと歩いて行きたいという夢を実現させるまでのドキュメントは『どうぶつ奇想天外』というテレビでも放映されたが、山に出かける途中、見えなくなったはずの彼女の眼にユーパスの白い背中が一瞬見えたというのは私にはとても嬉しく感じられた。
番組のKディレクターが真っ先に報告してくれたが、彼の声がとても興奮していたのを思い出す。

その盲導犬ユーパスが昨日亡くなった。
12月に亡くなった我が家の愛犬スーと同じまだ7歳という若さだった。
3日前から様子がおかしく、獣医さんに診てもらっていたが、昨日の朝容態が急変し、獣医に電話をかけようとするKさんを追いかけるように立ち上がり、彼女の懐に倒れ込んで息絶えたという。

スーを亡くした我が家のKの悲しみは大きく深かったし今もそれは続いている。
比較という狭量な範疇で考えないでいただきたいのだが、盲導犬ユーザーであるKさんの悲しみは彼女の人生と重ね合わせた時、胸が張り裂けんばかりの想いがある。
そのうえ彼女は明日からまた失明するのだ。
ユーパスに供えるお花はどうやって買いに行けばよいのか?
これからの買い物や通院などの日常生活はどうすればいいのだろう?
彼女に悲しみを深く引きずる時間はそう長くは残されていない。

「僕がいなくなって母さんが何処にも出歩けないなら、僕はいったいどうすればいいの?母さん!」ユーパスの叫びが響く。

Kさんの今の気持ちをお察し申し上げると共にこれからも見守っていきたい。そしてユーパスの冥福を心から祈る。
 


- Web Diary ver 1.26 -