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「呼び戻しの訓練をしていただけませんか?」
初めてカフェにこられた方からこのような相談を受けることがある。 ホームページでレッスンについてきちんと説明していない私に責任があるからつい口篭ってしまう。 今夜はそこらへんをちょこっと説明しておこう。
1.訓練依頼の前にお願いしたいこと カフェで吠える・散歩中に吠えるなどは数回のレッスンで割りと容易に改善することが出来る。 また、悪貨(失礼)に良貨が駆逐されては困るから、吠える犬には飼い主の了解を得て勝手に制御することもある。 これらはカフェの風紀を乱さないための私なりの努力であり、無分別に行っているわけではない。
一方で「来客に対して吠えて困る」「散歩のとき引っ張りまわす」「ボールを咥えて放さない」「暮らしやすい犬にして欲しい」など様々な訓練依頼を受けることがあるが、これら一般的な訓練には“親和ができ、犬を知り、さらに飼い主を理解”したうえでないと出来ないことが多い。 だから、出来るならば何度かカフェに通っていただき、それから相談していただくのがベストだ。
2、訓練するにも段階がある 『カフェのようなところでは吠えるし、喜びすぎて周囲に迷惑をかけるかもしれない』 もしそれがそれだけの問題なら対処も容易であり、医療に例えれば、単純な怪我や病気としてその部位を治療すれば事足りだろう。
しかし、人間の医療においても次のようなことが少なくない。 「いつかわからないけど足の指を怪我していて気づいたら腐り始めていたんです」 このような場合、局部の治療だけに目を向ける医者はまずいない。 血液検査で血糖値と腎臓の働きを調べそれに眼科の受診を勧め、ひとつに糖尿病を疑うはずだ。
つまり、「来客に対して吠えて困る」という飼い主の相談に対してさらに話を進めるうち「いたずらで困っている」「叱れば逆切れする」「旦那は晩酌のときつまみを与えている」「すぐに奥さんの膝の上に上りたがる」などの症状がある場合は、『吠える』という現象にだけ目を奪われるのではなく、『育て方・しつけ方あるいは血統素因』が原因の続発性疾患を疑うのが基本である。
単に吠えることにだけ目を向けるなら『友人に協力してもらい、来客となってドアを開けて犬におやつを与えることを繰り返すと、犬は、来客→不審者→吠える、から来客→おやつ→喜ぶ、と変化します』などという馬鹿げた一時的な訓練の発想に惑わされてしまうだろう。 しかし続発性疾患の犬の根源に目を向けず、対症療法的な単発の治療を行うことに何の意味があるのだろうか。 あるとすれば、犬にひとつのことが出来るようにして、それを褒めちぎり、そこからさらに発展させる訓練手法であるが、それは問題行動の解決というより初歩からの訓練にふさわしいやり方だと思う。
勿論、ひとつひとつの相談に対処法を与えることは容易であり、私が最近のハウスリフォームにみられる悪徳業者ならもう少し儲けしているだろうが顧客満足度は低くなっていることだろう。
さて、冒頭の『呼び戻し』に目をやると、『呼び戻しが出来ないから呼び戻しの訓練をする』というのは糖尿病であるのに傷の治療だけをすることであり、国体でも勝てないのにオリンピックに出せということであり、呼び戻しが出来ないのにノーリードの訓練をすることであり、つまり呼び戻しの訓練は歩行訓練・服従訓練の頂点に立つもので、基礎が出来ていないとそうそう簡単には教えられるものではないということだ。 基礎訓練から段階を経て、あるいは並行して教えていく項目である。
筋が通ったことを書いているのか、もはや自分で判断できないほど酩酊状態になってきた。 ここに書いたことを鵜呑みにしないよう注意されたい。
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