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アウトドアシーズン真っ盛りである。 常連の方の多くがキャンプだペンションだと出かけて行く一方、カフェを目指して久しぶりのワンちゃんや初めての方が来店され、カフェの均衡は保たれている。
「右眼の上に赤いものがあるので、見ておいてください」 今日お泊りのレオンベルガージェニーのHさんはそう言い残して仕事に行かれた。 お昼頃ジェニーの眼を見ると、そこにはまだ食いついて間もないダニがいた。 よく見ると左眼にもダニが食らいついていた。
そういえば昨日カフェの仲間のキャンプに一日だけ参加していたことを思い出し、そこでダニを拾ってきたと考えられた。 しかし、場所が悪い。 瞼ギリギリのところだから、処置がとても難しいのである。
ダニがついたときの私の処置は、アルコール綿花(アルコールがなければウィスキーでも代用できる)を局部に2〜3分密着させダニを酔わせて、食いつく力を減弱させ、コッフェルか刺抜きで深めに摘まんで一気に引き抜く方法なのだが、眼にアルコールが入るような今回のケースは困るのである。
因みに昔のやり方では、タバコや線香の火を近づけてダニの食いつきをはずす方法もあるが、ダニと同時に犬も熱がってしまうので現実的には難しい。
「カフェの閉店後に獣医さんのところで取ってもらおう。どんなやり方をするのか今後の参考にもなるし」 最初私はそう決断していた。 しばらくして「待てよ、ジェニーが獣医さんのところで大人しくしている可能性は低い。瞼ギリギリのところにダニが食いついているのだから、下手をすれば目を傷つけてしまうかもしれない。ダニを取るのに全身麻酔など洒落にもならない…」 そう考えた私は刺抜きを持ってきて自分で取ることにした。
「メガネ、メガネ!」 いざ取ろうとしたらぼやけて見えない私はそう言って老眼鏡をかけた。 一匹目のダニは見事に頭から取れ、ジェニーは身動きすることなく全身を私に預けていた。 ティッシュの上で潰すとプチっと音がした。 二匹目も一気に引き抜いたのだが、抜けたのは3本の毛だった。 ジェニーは痛かったはずだが、ピクリともせず横たわっていてくれた。 3回目のチャレンジで綺麗に引き抜くことができ、眼から2ミリの場所に食いついた2匹のダニは退治された。
眼の前に刺抜きを出されたら人間でもビビってしまうのに、ジェニーは瞬きさえ控えてくれた。 終わった後には「慌てなさんな。これしきのことで」とそのまま眠っていた。
「自分でやってよかった」と心から思い、瞼のダニを取った以上に信頼の結びつきを感じた。
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