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風が強く体感温度は決して高くなかったけれど、ガーデンでは雪解けが進んでいたので、意を決して雪山を吹き飛ばした。 雪の重みで山があった中央部分は幾分陥没しているようだ。 逆に山の周囲は踏み固められて氷状になっており、ガロアラシ号でも歯が立たない。まるでカルデラのようになっている。 このあとはツルハシでの手作業とお天道様頼りになる。 既に2割ほどぬかるみが出現しているので、シーズーのもえちゃんは遊びたがっていたが、飼主の方は初めからそのつもりはなかった。 「そう、ここはドッグランではなくカフェであるからして、ガーデンがいつも使えるとは限らないのだ」 私の精一杯の負け惜しみかも知れない。
駐車場の横に片付けておいた平均台も雪解けと共に側面が見え始めた。 横にしておけばよかったものを、正規の状態のまま雪に埋もれさせていたので、こちらも無残な姿となっているようだ。 横にしてシートを被せておくことを考えなかったわけではない。 「どれくらいの雪が積もるか分からないが、そのままにしておいたら平均台はどうなるだろう?」という好奇心と実証主義の結果だった。 しかし、まさか3メートルも積もるとは思っていなかった。 これも負け惜しみだろうか。
負けず嫌いで完璧主義だった30代の初め頃、まだ幼い我が子3人の誰かが、私の中学時代の思い出だった大切なカセットのテープ部分を部屋中に引っ張り出したことがあった。 私は3人を正座させ「壊れてしまってもうどうにもならないんだぞ!誰がやったか正直に言え!」と怒鳴った。 上の二人が黙ってうつむいていたら、まだ3歳くらいだった下の子が「ねぇぇ、父タンねぇぇ、ショウジキ…ショウジキ…、父タン!掃除機壊れたの?」 私は吹き出してしまい、そして恥ずかしくなった。 「形あるものはいつかは壊れる」義理の祖母はいつも笑い飛ばしながら口癖のように言っていた。
いつの頃からか私も『なんちゃない』と徐々に思えるようになっている。 まだ人生経験が足りないから、負け惜しみになることもあるようだが…。
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