|
カフェは無事この一年の営業を終えることができた。 ご利用いただいたすべての方とワンちゃんたちに「ありがとう」です。
天には月が輝き、凍てつく鋭い寒さがすっぽりと大地を覆っている。柔らかな雪の冬模様ではなく、まるで十勝のような内陸型の寒さだ。
32年前、幼なじみで親友のFが「俺は北海道に行く。できれば向こうで酪農をやりたい」と言って帯広の大学へ進んだ。 法隆寺の隣町に住んでいた私は、殆どこの小さな町から出ることはなく、町内にはめっぽう詳しかったが北海道などは南極/北極の範疇でしかなかったので相当に驚いた。
その年の冬、私は帯広の彼の下宿を訪ね仲間と5万円で買ったというオンボロ車に乗って愛国駅と幸福駅を案内してもらった。 その頃から私には北指向が芽生えたのだが、数年後Fは「俺はアメリカに行く。そこで大規模農業を学びたい」と渡米してしまった。
私が札幌に住むようになり、彼が帰国してからの1年間が二人で北海道を共有した時間だった。 厚田村の農場を牧柵で囲う仕事をした後、Fは一旦奈良へ戻り両親の説得を試みながら家業を手伝っていた。 しかし、Fの父親の死と共に彼の夢が叶うことはなく兄弟でお寺と保育園を継ぐことになったのだが、Fのおかげで世界を広げられた私はこうして今もなお北海道での生活を続けている。
帯広の銭湯に入った後、下宿に帰るまでの僅かな時間にタオルと髪の毛はバリバリに凍っていたよなぁ。 今夜、シバレたガーデンに出てなぜか『あの頃』を思い出した。
|
|
|