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夜半に入り猛吹雪が吹き荒れている。 『災』が昨年を表す文字だったようだが、静かだった年末年始を過ぎて自然の猛威が再び災いをもたらさないかと心配させるほどの荒れようだ。
個人的には自然がもたらす状況については自然らしくあって欲しいと思うのだが、つい先程までイタリアンレストランで飲み食いしていた5人の内のKさんが無事帰宅できたが心配でならない。 何しろ、住居表示を見ただけで何処か人里離れた地区に住んでいるのが明らかな名称になっているからだ。
北海道の吹雪は道路と路外の区別を識別することができない状況になる。特に夜ともなると車のライトを遠目にすると吹雪しか見えないためライトは必ず近めにし、前を走る車のテールランプか道路端に設置された高さ5メートルほどの光る標識のテッペンを見ながらの走行となる。 今夜の吹雪はそれを確認するのも難しいかもしれない。
Kさんは昨年ふいにカフェに現れた。 ムーンちゃんというゴールデンを伴っていて「実はもう一頭いるんだけど、とんでもない奴でこんなとこには連れて来れないんだ」と、つっけんどんで女性らしからぬ話し方が親しみを呼び印象的だった。
その頃も私は訓練を引き受けることに消極的な生活をしていた。 訓練をするためには膨大なエネルギーを必要とするのだが、かなりの放電生活をしていたから余程のことがないと意欲が湧かなかったのだろうと今になれば思う。
しかし、Kさんはそんな私の状況などお構いなしで訓練スケジュールを立て、犬を見れば吠え立て攻撃的になるトム君の訓練を依頼してきた。 エネルギーの再充電を余儀なくされた私は、尻を叩かれるようにトム君のレッスンを行い、道筋をつけた。らしいことを忘れていた私にKさんは話してくれた。
そのトム君は今ではカフェの顔となり、親しみやすい性格から誰からも愛されるゴールデンになった。
ごめんなさい。焼酎の酔いが急に回ってきた。 もう1時半。Kさんは無事帰宅したと信じて寝る。 明日は7時から本格的な除雪をしなければならないから。
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