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海の向こうでイチローがシーズン最多安打記録を達成した熱い日に、カフェではストーブが焚かれ、我が『北海道日本ハムファイターズ』はプレーオフ第1ステージで逆王手をかけた。 本当はこの話で今日は進めたいのだが、例のリコールのテーマが重くのしかかっている。
さて、リコール(呼び戻し)の定義を何処に置くかで話は変わってしまうが、ここでは『犬にとってやや強めの誘惑があろうとも、指示により戻ってくる』という大まかな表現にする。
1.犬と人の信頼関係が出来ている場合 長年連れ添っていると犬は言葉を理解し、主人に対して深い愛着を示すようになる。フランスの絵画には戦闘で倒れたご主人の傍からいつまでも離れようとしない愛犬の姿を描いたものもある。恐らくこの犬は激しい砲撃の中でも、主人の指示を聞き分け行動していたに違いない。
それではこの犬は、主人に対する深い信頼関係だけで指示どおり行動していたのだろうか? 否、そうではあるまい。 それまでの生活の中で、座ること・行儀よくすること・待つこと・呼ばれたら戻ることを繰り返し教えられ経験していたはずだ。しかも日々変化する環境の中で緊張感をもって主人の言動を注視していただろう。
日々変化のない弛緩した生活を送っている現在の我々に当てはめると、信頼関係だけではリコールが自然発生的に形成されるとは思われ難い。 だから次のようなプロセスを意識的に行う必要性がある。
自宅で呼べば来るようになる・誰もいない空き地や草原をノーリードで歩く・その間に呼び戻さなければならない状況が現れ、時に強く時に緊張感を持ってリコールを試み、犬にもその気持ちが伝わるという経験がある・ノーリードの環境がいくつも変化し、時には人や犬にも出会うことがあり、愛犬がリコールに従わない場合の決着がそこで付けられ、飼主は愛犬のリコールに対する限度を徐々に広げていく努力をする。
信頼関係だけでリコールが成立する確率はきわめて低いし、信じていた犬がリコールに従わなかったからといって落ち込むことはない。 「おいで・こい・COME!」の言葉の中に、はっきりとした意思を込め、その意思を犬にも理解させる努力と経験が足りないだけである。 リコールとは犬が別方向へ行きたいと思っている時にでさえ、戻らなければならない命令である。 だからこそ私は普段からめったにどうでもよい時に「おいで」という言葉を口にしない。 ノーと同じで絶対的な言葉だから、使う場面を選ぶのである。 犬との間に信頼関係とリコールの意思疎通ができていれば、犬が「行っていい?」という顔で一度振り向いてくれることがあるのだが、その瞬間が私は好きだ。
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