From the North Country

今日のショートレッスン 2004年06月08日(火)

  午後になって昨日のようにリラ冷えとなった。夕方はストーブを焚き、閉店後の散歩も早々に切り上げた。

今日は膝の調子も良かったので、ジャックラッセルのケイトちゃんのショートレッスンを行った。
これまでにも何度かサービスチェックとアドバイスを行い、だいぶ良くなったとご主人は言われたが、散歩に出かけた時、落ち着くまでに数分かかってしまうのでそれを何とかしたいという相談だった。

このような時は玄関を出た時に数分の服従訓練を行えばよい。散歩に行こうとはやる気持ちを少し落ち着かせるだけではなく、飼主にも犬に対して「マジだぜ」という気持ちを持つことが必要だ。
犬は既に舞い上がっている訳だから、スワレ・フセ・マテという課目すら安定してできない。これをきちんと行うことが難しいのだが、その責任は犬にあるよりも飼主の接し方にあることが多い。
とにかくやたら声をかけすぎて、さらに犬を興奮させている。とにかく黙って制御することを身に付けよう。
次に褒めることをやめよう。これも同じ理由だ。出掛けるというだけで犬は喜んでいるのだ。火に油を注ぐことはない。
排尿便のための散歩をしているのなら、何をしても無駄である。とにかく出すものを出すまで犬は落ち着くはずがない。この場合普段のトイレタイムと散歩を明確に区別する必要がある。

ともあれ服従訓練を済ませてケイトちゃんのレッスンを始めた。
姿勢を保持する必要性とそのためのリードコントロール。歩きながらも『聞く耳を持つ』ためのイエストレーニング、言葉のかけ方などを、説明し、やってみせて、やってもらった。
「なるほど」と興味を持って感心されていたので、次回の来店が楽しみである。
ただ、もう一つの相談であった「ちゃぶ台にダイビングして上のものを掻っ攫ってしまうんです」というケイトちゃんだから、相当手強いと予想している。
 

有料レッスン 2004年06月07日(月)

  肌寒い一日だった。
お店の周辺は住宅街で緑も多いが、街の中心部に住んでいた頃とは季節感が違う。ライラック祭りはとっくに終わっているのに、この辺りでは今が見頃になっている。古くから住んでいる人に聞くと、ここは札幌テレビ塔とほぼ同じ高さにあるらしい。それで合点がいった。気温は中心部より2度ほど低いし、風はやたら強い。以前はそのテレビ塔が見えたというから相当住宅が増えてきたのだろう。

カフェの周辺を毎日たくさんの犬たちが散歩している。小型室内犬とレトリーバーが多いが、中にはアイリッシュウルフハウンドとニューファンさらにはブリアードを引き連れて散歩をされている方もおられる。ただ皮肉なことに近辺の方がカフェを利用されるケースは少ない。その主な理由はわかっている。カフェの前にアクリルボードに書かれた『ご利用案内』という掲示板があるのだが、そこには「基本的な制御が出来ること」「攻撃的でないワンちゃん」という項目があり、毎日のお散歩途中にそれを読まれている方の多くは「ありゃ、家の犬は無理かも?」と二の足を踏まれていると近所の常連さんが教えてくれた。
それに比べて口コミで遠方から来られる方は、看板を見ることもなく一気に駐車場に入って来られるのだ。そのうえ、カフェで興奮したり落ち着かない犬は許可を得て私が制御するから、ガーデンで他の犬たちと遊ぶ頃には、落ち着いて仲良く遊ぶことが多い。白いフェンスと白樺それにニセアカシアに彩られたガーデンでそうやって遊ぶ犬たちを散歩の途中に外から眺める近辺の方々は「やっぱり家の犬じゃダメだ」との思いを深くされているに違いない。

あの文言は万が一に備えて必要ではあるが、制御の許可さえ頂ければ、そしてご自身で制御の意思さえあれば、ファイターのような積極的攻撃性のある犬は別にして対応は可能である。それが『学べるドッグカフェ』の所以である。

今日、どう見てもパグと黒ラブのハーフと思われる血統書付きの『純血のパグ』がやってきた。太い声で吠えつづけるのでご主人が抱きかかえている。私が近寄ると牙をむいて吠え立てとても威勢がよい。しばらく様子を見ていたが、ご主人はコントロール出来ないと諦めているのか抱きしめるだけで、犬は相変わらず吠えている。他のお客さんの迷惑を考え、制御の許可を申し出た。リードを預かりガーデンに出て5分後にはそこそこに落ち着いたので店内に戻り、しばらく制御を続け飼主に戻した。
「家の子がこんな風に大人しくなるとは信じられない。初めてこんな姿を見た」と喜んでいただけたようだが、私は以前のコラムで反省の弁を口にしている。
そうだ!経営のためには『街の電気屋さん』にならなければいけない。
「店内で静かに過ごすお手伝いは無料で行いますが、それから先は有料レッスンになります」
今日、高らかに宣言するゾ。
 

愛犬自慢その2 2004年06月06日(日)

  さっきまでテレビの前に陣取って『どうぶつ奇想天外』を熱心に見ていたが、「今日のはつまんないね」とテングザルの特集の途中から居眠りを始め、そのままスーは本格的に眠り始めた。1日の内、恐らく4時間ほどしか起きてないと思う。
その中で最も活動的になるのが閉店後の散歩の時間だ。野球場ほどもある緑一面の公園には、その頃誰もいなくなり貸し切り状態で走り回ることができる。あのスーがダッシュを2〜3回繰り返し、背中を芝に擦りつけながらのた打ち回る至極の時だ。走り方はおチャラケているとしか言いようがないが、生き生きとし時に幼犬のように若返った顔を見せてくれる。1時間も連続して起きているスーを見るのはこの時だけで正に貴重な時間と言える。

スーは気が弱く消極的で、がさつな動作や争いごとが嫌いである。感受性は高めでわがままさや興奮度は低い。とはいえ、これまで4度の盲導犬候補の仔犬を出産し、子育てを行っているので女としての強さがあり「許しませんぞ!」と叱る姿にはたまに迫力がある。

思えば、スーに命令をすることはそう滅多にあることではない。家族に対してそうであるように、話し掛ければ普通に答えてくれるし、面倒くさがることもあるが話は通じているからだ。
これが普通の犬だと私はきちんと命令する。人の話を聞かない振りをしたり無視し、誤魔化して逃れようとすることは絶対に許さないからだ。命令魔(どうでもいい時にやたら命令ばかりする人)は嫌いだが、分かっているのに人を小バカにする犬は何とかしなければ将来が危うい。

スーは私のパートナーの子である。彼女は、犬は話せば分かると信じ込んでおりそれを実践してきた。犬は飼主に似るというが、スーは確かにやること為すこと彼女に似ている。
訓練士としての私は短期間に効率良く確実に犬に物事を教える方法を身につけてきたが、今、のんびり育てる方法を彼女から学んでいる。
 

愛犬自慢その1 2004年06月05日(土)

  愛犬自慢になって恐縮であるが、我家の愛犬スー(ゴールデンレトリーバー7歳)はこれまでに出会った犬たちとはかなり違っているように思う。あまりに身近すぎて深く考えたことはなかったけれど、彼女との生活はやはり普通の犬との生活ではないように思える。取り立てて何が、と言うわけではないが、トータルで不思議な犬なのである。ちなみに彼女の様々な反応は7歳と言う年齢から来ているものではなく既に2歳の頃から定着している。数回に渡って親バカぶりを紹介させていただくことにする。

朝、7時頃に私たちが活動を始めても彼女は私のパートナーのベッドでまだ眠っている。
「スーゥ、シッコ行くよ!」と声をかけると、迷惑そうに重そうな瞼を上げるが、また布団に潜りなおししばらくは出てこない。
「早く、行くよぉ」。何度目かの呼びかけにようやく出てきた彼女の頭には人間並みにしっかり寝癖がついている。

「スーゥ、ご飯だよ!」
「どうしようかなぁ」とまた面倒くさがっている。食器のところまで行くと美味しそうに全部食べてしまうのだが、それまでの腰が重い。

朝のテレビ番組で『今日のわんこ』というのがあるが、これは好きで最後までじっと見ている。テレビを見る犬は何頭も知っているが、スーの『みる』は人間のそれと同じ『観る』である。夜の動物番組はとりわけ大好きで、ナレーションの中に自分が知っている言葉を聞き分けては「なるほど、そうか」という顔をして1時間でも観ている。

基本的に日本語が通じる。
散歩の時は社会的なこともあり人前ではリードを着けるが、本来何処へいってもノーリードで問題なく、「ちょっと待って」「いいよ」はやく・ゆっくり・帰るよ・猫いるよ・ボール捜してもっといでなど多くの犬たちがやるようなことも普通に出来る。
困るのはスーが用事があるときに私たちに話し掛けることである。
「ごめんなさい、このドアもう少しちゃんと開けてください」「たしか、昨日のガムが残ってたはずだから、持ってきてくださる?」「ねぇ、お母さんどこか知らない?」「この高さじゃわたし届かないから取ってくださる?」「ベッドに上がりたいんだけど、お布団のこの辺り抑えて上りやすいようにしてくれない?」
そのすべてが、対象物に視線をやりながらの「ヒ**ーン」の一言だ。解読には時に想像力が必要だが、間違えても心配ない。当たるまで言いつづけるのだから。

家にいて『スーがいるから』と配慮することはない。ちゃぶ台に食べ物があっても心配ないし、いたずらは皆無だ。
静かに歩き一歩ずつ階段を昇り降りし黙って寝ている。

つい先程スーがやってきて私を試すようなことを言った。例によって「昨日もらったガムのことだけど、何処にあるか知らない?」「さっきジェニーが持っていって全部食べたでしょ。」「あら、あれ私のガムだったの?」
知ってたくせに一応とぼけて見せて新しいガムを貰おうとの魂胆だった。いつもなら「早くもってきてよ」としつこいのに、今晩は「でひぇっ、ダメか」とばかりに引き下がっていった。(つづく)
 

共に学ぶ 2004年06月04日(金)

  愛犬の問題行動を治したいとしよう。さて、皆さんならどうするだろう?
「そんなの自分でビシッとやって教えりゃいいのよ。」
「しばらくは苦労するだろうけど愛情もって時間をかけて言い聞かせながら暮らしていれば、犬はそのうちいい子になるものよ。」
「いろんな本を読んだり、しつけ教室なんかに通って教えてもらって勉強してるの。」
「うちは訓練所に半年でも預けて治してもらいます。」などなどいろんな声が聞こえてきそうだ。

それぞれに一長一短があり、犬の性格や、問題行動の種類によって「何とも言えない」というのが正直なところだ。

仮に私に相談があった場合、私は複数の事柄を考える。
1.犬の健康状態に問題はないか?
2.犬種・年齢・性別その他特性はどうか
3.生活環境はどうか?
4.飼主に問題はないか?
5.経験によるものかそれとも先天的なものか?
などがスタートであり、同時に犬に様々な刺激を与えてその反応を見る。
つまり問診と刺激を繰り返し診断の仮説を立てるのである。
難しいのはその次だ。
プロとして相談を受けているわけであるから、そこそこの結果を出さなければならない。よい結果をお見せすることは簡単であり、ほとんどの場合可能であるのだが、ここに問題点が少なくともふたつあるのだ。

ひとつは、飼主が長い間困っていた事柄なのだから、元々初対面の私がすぐに解決するにはどこかに無理がある。つまりは、きちんと挨拶を済ませ信頼関係を築く数回の「無用の用」の時間が必要なのだが、それを端折ってしまいがちなことである。
ふたつ目は、私にできることであっても飼主が出来ないことをやって見せても全く意味がないということである。
確かではないが、山本五十六だったか誰かが「言い聞かせ、やって見せ、やらせてみせねば兵は動かじ」と言うようなことを言っていたが、飼主に対してどの方法が対応可能かを判断する能力とより多くの解決策を提示できるかが問われている。

魔法のような訓練は簡単であるが、飼主にそれを教えるのはとても難しい。言うことを聞く犬を訓練しても、心通わぬ(閉ざした)犬にしてしまったならその訓練は失敗である。
ここから共に学べたらと願う。
 

3度目の満月に 2004年06月02日(水)

  今日も暑い一日だった。ワンちゃんたちの最後のオシッコのため夜11時半にガーデンに出た。ひんやりとした空気が日中に蓄熱した身体に心地よい。いや蓄熱だけではなく焼酎による発熱も加わっているため、尚更気持ち良く感じた。大きく背伸びをすると南の空には綺麗な満月が輝いていた。そういえばこのホームページをアップした夜も満月だった。あろうことか筆不精の私のコラムが3回目の満月を迎えていることに身震いして部屋に駆け上がってきた。

月曜からお泊りのゴールデンは、以前この欄で『奥さんによじ登る』犬として紹介したことがある。
「とても困ってるんです」という奥さんの顔には満更でもないものも混じっているように感じていたが、やはりそうだったと思う。
まる3日間私と寝食を共にしたが、とても落ち着いたいい子である。
ただ、犬が苦手で、接近された時に不安を感じて私に助けを求めるように飛びつくことと、昨夜のジンギスカンパーティーのような賑やかな雰囲気の中では、自分に注目を集めるため甲高い声で吠え、両手をかけることがあった。
私は「君はいい子だ。目をそむけず、ちゃんと見据えて自分で解決してごらん。」とばかりに突き放し悟られぬよう見守っていた。

恐らく、この子と奥さんとの間には過去のどこかで次のようなことがあったのだろうと予想できた。
犬の不安に対しては、抱き上げることで守ってあげた気分になり「ああ、怖かったの?大丈夫大丈夫、もう大丈夫だよ」と小型犬に対するような接し方があり、成長を続ける中でもそれは続けられ、人も犬もその対応に満足する部分を強く持っていたのだろう。
また、公園などで他の犬の飼主さんと立ち話をしている時に、犬は注目を集めるべく吠えてみたら「あらまあ、この子自分に注目して欲しくて吠えてるんだわ。きっと焼きもち焼いてんのよねえ。あっはっは。よ〜しよしいい子ねえ」と言って抱きかかえることもあったに違いない。

「それのどこがおかしいの?可愛い我が子に対して当然のことで微笑ましいじゃない?」という方もおられるだろう。
犬によっては飼主の思いやり以上に過剰に反応したり、別の結びつけ方をする場合が多いのを知っておこう。

人のほうが利口なはず。自分の愛情表現と相手がどう育っているかは別物だ。冷静に我が子の性格を振り返って今一度、接し方を考えてみるのも犬と暮らす楽しみの一つである。
 

予想はよそう 2004年06月01日(火)

  朝からガーデンの日当りにある温度計は29度を指していた。けだるくなるような午前中、心地よい午後、爽やかな夕方だった。
この野郎!詐欺師!ペテン師!嘘つき!この1週間は晴れるって予報してたじゃないか!
あまりの天気の良さに閉店後パートナーの息子と彼の彼女を招いてジンギスカンパーティーを急遽計画した。
ところがガーデンで炭火を起こし始めた頃から急に雲行きが怪しくなり、二人が到着した頃には激しい雨になっていた。
私のカフェは良くできたもので、どのような気象条件でも即座に対応できるため、ウッドデッキで肉を焼き、店内でのんびり食べることができたが、本当ならアウトドアでのパーティーが楽しめたはずだった。
予報されていたのだったら明日に伸ばすこともできたのに。気象予報諸士これから心せよ!「ようわからん!」と言ってくれれば我々の自己責任において対応できたのだぞ。

私は犬の相談を受けた時はっきり「見てみなきゃ、ようわからん」という。今朝も遠慮がちに入店された方は、犬をお連れではなかった。ラブとダルメシアンのハーフでとてもハイパーなため、同伴するのを遠慮されたようだった。
話を伺いながら、どのような犬か想像を広げたが「とにかく一度連れてきてください」とお話して明日の朝来られることになった。

街の電気屋さんの話をご存知だろうか?
「テレビが故障したので見に来てください」という依頼があった。電気屋さんが出かけてみると故障の原因はすぐに分かったそうだ。でも、あっという間の作業で片付けてしまっては、依頼主は何か損をしたような気分になってしまうし、有り難味もない。だから少しは「ああでもない、こうでもない」といじくるのだという。そしたら大いなる感謝の気持ちで支払ってくれるというのだ。

もし私にそのような商売のテクニックが備わっていたら、この店はもう少し潤っていたに違いない。
気象予報士のように、外れたとしても皆から許されるような雰囲気と、街の電気屋さんのような憎めないテクニックを今後は探ってみようと真剣に思っている。

それにしても、ドッグカフェに漂うこのジンギスカンの匂いに、明日訪れる犬たちはどんな反応を示し、私はどう対処すればよいのだろう?
「気のせいだよ」とさらリ言ってのけ、明日訪れるラブとのハーフの犬を迎えたいと思う。プロフェッショナルとして。はて.出来るかなあ?
 

オープン半年に思うこと 2004年05月31日(月)

  皆さんにまず感謝しなければならない。
カフェをオープンして今日でちょうど半年が過ぎ、この間大きなトラブルもなく、何よりまだこのカフェが人手に渡ることもなく存続し、私たちが食い繋げていることを。

この半年の間にいろいろ学ばせていただいた。それまでが盲導犬というどちらかと言えば特殊な世界での経験であったがために、学ばなければならない多様な犬種と家庭犬のニーズと対応についての経験ができたことが一番の収穫であった。

2002年のサッカーワールドカップの年に退職し、車での生活をしながら4ヶ月の間日本を旅した。
次の展開を決めかねていたつもりだが、今になって思えば旅の始めに旧知のムツゴロウ動物王国の石川さん宅に5日間居候した時に「やはり犬に関わっていこう」と決めていたのだと思う。
一気に九州に渡り、時間をかけてのんびり北上しているうちにその気持ちは徐々に膨らんでいった。

人生とは人と人のつながりで成り立っていると実感し感謝した頃でもあった。
たくさんの方々に支えられてきたが、とりわけ瀬棚のN先生とそのお母さんの
物心両面にわたる援助にはどんなに感謝しても尽きることはない繋がりを感じている。いつまでもこの気持ちを忘れることはないだろう。
たとえお二人に直接の恩返しはできなくとも、犬を愛する方々への私なりの支援で、感謝の気持ちを届け続けていきたいと思う。

これからもまたいろんな方々との出会いが待っているはずである。次の半年へ向けて恥ずかしくない時を過ごしたいと願う。
 

ドッグカフェナガサキ育ち 2004年05月30日(日)

  昨日は寒くてストーブを焚き、今日は半袖でちょうどよかった。また季節のせめぎあいが始まった。

札幌では今日が運動会のピークであり、家族で参加するためワンちゃんをカフェに預けて行かれる方もおられた。その中に生後5ヶ月の黒ラブのドルチェがいた。

2ヶ月ほど前に、かじる・いたずらする・落ち着かない・トイレのしつけができない…と困り果てたような問い合わせがあって、カフェに連れてきてもらった犬だ。観察しているととてもラブらしいラブで大きな問題は見受けられなかった。常連さんからは「可愛い!なんていい子!」との声もあがってその時からドルチェは社会性を身につけ始めた。

飼主の方に生後3ヶ月のラブがどういったものなのか、今後さらにどれほど凄まじいものになるのかということを伝え、対処法をアドバイスすると安堵の表情を浮かべられたことを今でもはっきり覚えている。経験のない/少ない方々にとって「この犬の行動は異常ではないのだろうか?」と不安に思うことを「これが当たり前なんだ」と思えるだけで心が楽になることがあるが、ドルチェの家族が正にそれであった。一度だけお泊りをしてしつけをしたことがあったが、ドルチェは順調に育っていると思う。思慮深く落ち着いており、しかも大型犬が居並ぶ中で堂々と渡り合っていた。

カフェの入り口に飾ってあるパンジーとビオラのフラワーポットの前で、咲き終えた花を摘んでいた時、下の道を小学校2年でジャックラッセル・エス君の相棒の大我(たいが)君が友達と歩いていた。
「ここは何?」と友達。
「ドッグカフェだよ」と大我君
「ドッグカフェって何するところ?」
「犬を預けたらおりこうさんになって帰ってくるところだよ」
「ふぅ〜ん」という会話だった。

私もふぅ〜ん。大我君はそんな風に思っていてくれたのかと感心しうれしくなった。3ヶ月前まで大我君の服を引きちぎり、手足をかじっていたエス君も今では大我君の立派な相棒になって、ふたりで近所を散歩する姿を最近見かける。
これからも幸せな愛犬との暮らしのサポートができたらうれしく思う。
 

我に返すその4 2004年05月29日(土)

  引っ張りや興奮、吠えること、落ち着かないなど諸々の状態を改善し、コマンドを受け入れる態勢を作るためのコントロールの一つとして『犬を我に返す』ことが必要だと書いてきた。そのキーワードとして『リードショック』『毅然とした態度』までを解説してきたが、仕上げは『えらいぞ』である。

犬を制御する時、大別して4つのタイプがあると思う。

1.飼主と愛犬との信頼関係が成立しているか、とにかく従順な犬に恵まれたことで、愛犬が容易に制御を受け入れてくれる状態。
2.周囲に気をとられることがない時や、おやつがある時など都合のよい時は制御を受け入れるが、結局は愛犬に甘く見られている状態。
3.日常的に権威と力で強制的にねじ伏せる状態。
4.犬を我に返し、その上で指示を与える状態。である。

タイプ1が家庭犬の理想であろうが、良い犬に恵まれる確率と、そこまで育てあげるには様々な苦労もある。ただ、このような家では何頭犬を育てても、ほとんどが良い犬に育つことを考えれば、飼主の適性も大きな要素になっていると考えてよい。問題が一つあるとすれば、人と犬との関係が良好であり対等過ぎて、肝心な時に言うことを聞いてくれないことがある。

タイプ2が最も多く一般的家庭犬と飼主の代表選手である。恐らくこの状態が日本において犬たちの社会参加を遅らせている第1の要因だと考えている。「まあまあ、犬だもん仕方ないじゃん」。
だから日本の犬はバスにも乗れないしカフェにも連れて行けない。基本的に周囲の人は犬嫌いだと考えたら、最低限の制御はいつでもできるようになって欲しいと願う。

タイプ3は本人は得意げなのだろうが周囲の人を不愉快にしていることに気付いていないのが悲しい。犬という生き物はどのような状態で暮らしていても悲観することなく飼主に愛着を示す。それを逆手にとるような強制による強引な方法は家庭犬ならば尚更控えたほうがよいと思う。

タイプ4はタイプ1以外の犬に用いる私が主張する方法である。リードショックと毅然とした態度は普通なら犬を緊張させてしまう。我に返すのが目的であり、ビビらせたり恐怖心を持たせるのは本意ではないが一時的に緊張させることがある。リードショックの時に叱ったり声をかけなかったのは、威圧的になったり怒ったりしてるわけではないことをさりげなく示していたのだ。その仕上げとして「えらいぞ」という言葉がある。褒めているのではない。コントロールによって緊張気味に飼主の反応を伺っている犬の、心と筋肉の緊張を弛緩させているのだ。そして一時的に油断させ、再び羽目をはずして我を失いそうな状況を誘発し、さらに無言のリードショックと毅然とした態度で緊張を与え、えらいぞの繰り返しによって、飼主が愛犬に何を要求しているのかを自身に考えさせているのである。

恐らくこの方法だけを用いてもうまくはいかない。
犬とは利口なもので飼主には懐柔を促す振る舞いをするだろうし、訓練士には一部心閉ざす振りをする。
そこで私が考えたのがプレトレーニング(訓練前訓練)からトレーニングまで幅広く応用が利く『イエストレーニング』である。犬に『聞く耳』とやる気を感じさせるオペラント学習理論(説明は難しいがヒトは勿論ネズミやウサギにも意図した行動を起こさせることができる方法)に基づいたアイデアが、この壁を乗り越えさせてくれるだろう。
大きなことは言えないが少なくとも私の中では大きな力になっている。
ここからはCM。ホームページのトレーニングの中で『イエストレーニング』テキストを取り上げていますのでよろしく。
 


- Web Diary ver 1.26 -