From the North Country

試食会 2004年10月31日(日)

  今日で10月も終わり。
朝から生憎の雨で、出足が悪いと予想されたカフェでは、スタッフによる来月のパスタの試食会が開かれた。

何処からそのようなアイデアを仕入れてくるのか知らないけれど、月末近くになるとパートナーのKとスタッフのMが何やらくっちゃべっている間に話がまとまるようで「来月のパスタはこれにしまぁす!」と言って試食会が催されるのだ。

「食べてみてください」と丁重に差し出されるパスタ。
私はまず、見た目の美しさと豊富な具材で第一印象を決める貧乏性の性質だから、タラコスパゲッティのようにいくら美味しくても貧相に見えるものは躊躇してしまう。
次に、香りと温感が続き、味・食感で最終判断を行うのだ。
「どうでしょう?」
覗き込むようにふたりが私の反応を尋ねる時が、今の私の奔放な生活の中でもっともストレスを感じ、怖じ気ずく瞬間である。

カフェをオープンした11ヶ月前。同じようなシチュエーションで、まだ未熟な私は女の気持ちを推し量ることもせず、感じたままを口に出してしまった。
途端に空気が変わり、私は無言の集中砲火を浴び、作る側の意欲を喪失させてしまったのだ。
『大酒飲みでヘビースモーカーの男に、愛犬とランチを食べに来る女性の好みが分かってたまるか!』
私にはそう聞こえたし、そのとおりだと反省した。
以来、試食の時の第一声は「美味しい!」となった。

カフェの料理は本格的主婦料理である。
家族が安心して美味しいと言える料理を主婦たちが知恵を絞って作っているのだから、私なぞが口を挟む余地は本来ないのだ。
「カレーやさんのカレーより美味しい」と何人もの方から褒められると今では私の方がうれしくなってしまう。

「にんにくの香りがもう少しあったほうがよい」というのが来月のパスタに寄せる密かな感想だった。
その11月のパスタは2種類。
『野沢菜とジャコのピリ辛パスタ』がメインで『お肉たっぷりミートソース』は普通のミートソースとか。
さてさて、皆さんの好みはどっち?!
 

抜けない乳歯 2004年10月30日(土)

  生後8ヶ月を過ぎても乳歯(主に犬歯)が抜けず、永久歯との二枚歯になっているワンちゃんが多くみられる。
仔犬の頃あまり硬い物を齧らなかったのが原因とは言い難い。というのも抜歯した乳歯を見てみると、まるで永久歯のような歯根を持っているからだ。
遺伝的な要素も捨て難いが、フードも関係しているのではないかと思ったりもする。

20年前なら仔犬の骨の発育を正常に保つため、ドッグフードの他にDカル(ビタミンDとカルシュウム)や煮干の粉末などを添加して与えていた。
最近はそのようなものを添加しなくても、『クル病』という病名すら聞くことが少なくなった。
恐らく発育に充分すぎる成分がドッグフードに含まれるようになり、必要以上に日々摂取しているのではないかと考えてしまう。
しかも食物からの摂取であれば余分なカルシュウムなどは排泄されるのだろうが、薬剤のような複合的な成分だとそうもいかず、本来自然に抜けるはずの乳歯の成長を異常に促進したり、結晶化して膀胱内で悪さをしているのではとも勘ぐってしまう。

私は獣医でもないしメーカーの研究者でもないから、非科学的なことであっても、無責任なことが言えるしいとも簡単に経験則で判断できる。
フードはやはり素材で選ぶべきだし、メーカーは何がどういう形で含まれているかを知らせることはもとより、何が含まれていないかももっと知らせるべきだろう。
そして獣医師や研究者には自分が知り得た『広報すべき情報』についてもっと多く発信していただければと思っている。

さて、抜けない乳歯については去勢や避妊手術など全身麻酔を必要とする手術などの時に、伸びすぎた爪と一緒に処置していただくのがよいと思う。
 

今夜はまじめに考えた 2004年10月29日(金)

  うるさいエンジン音で目が覚めた。
最近はすっかり寝坊することに慣れてしまって、子供たちの通学の声でも起きなくなってしまっている。
しかし今朝はさすがに目が覚めた。

ガーデンの正面にある借景だったニセアカシアと白樺の木がチェーンソーで切り倒されているのだ。
空き地だった土地が売れ、誰かが家を建てるらしい。
この辺りは一級の住宅街である。静寂な生活を手にするため誰かが購入した自分の土地の木を切ることは当然の権利である。

だが、ガーデンの正面半分の景色が変わってしまったことと誰にも当たり様のない無念さが、「受け入れたうえで対策を」との思いを超えてイライラしていた時、同じ思いであったはずのKが「怖い顔しないの!」となだめてくれたおかげで気持ちが落ち着いた。

そんな朝から始まったカフェだったが、結構賑わいを見せてくれただけでなく、病気だと聞いて以来心配していたGレトリーバーのモナジーが元気な姿を見せてくれた。
仲間たちも集まり、その復帰を祝う会話がテーブルから聞こえ、私はだんだん元気になっていった。

生き物であるからいずれ命は滅びるし、健康であるがために病に伏せることもある。
形あるものは壊れることもあれば姿を変えていくこともある。
だから放置し無感動であることが許されるのではない。
何故なら私たちがその姿であり、結果はどうあるにせよそこで感じることを精一杯感じ、そこで成すべきことを精一杯成すことが生きている証であろうから。
 

緑化計画断念 2004年10月27日(水)

  春先から目指してきたガーデンの緑化計画は、昨夜からの初雪12センチが積もった今朝、断念しようと決めた。

ラティスでガーデンの一部を囲みながら、耕した後にオーチャードとホワイトクローバーの種を蒔き、緑が一杯になると移動し、次の囲いの中で緑を育てる3カ年計画だった。
計画どおり緑は育ち、水はけも良くなった。
犬のオシッコにも強く、どちらの草も花をつけるようにまで育っていた。

しかし、開放する度に8畳程度の緑地は人と犬に踏まれ、数週間の内に7割方が消えていく。
駆け回る犬の数に比べ絶対的に敷地が狭いことが原因なのだが、このことは最初から折込済みであり、だから3ヵ年を予定していたのだ。
計画を断念した理由は別にあった。

1.ウンチが見え/取りづらく、取り忘れ/残しが増えてきた。
2.特殊な鉱石を粉砕したものをガーデンに撒いていたのだが、それがバクテリアも生息しやすく臭いを吸着するだけでなく食べても安全であることが実証され、さらに今朝の雪景色に似ているとの単純な情緒的な発想からであった。

ガーデンのフェンス周辺の緑は、来春もまた芽吹いてくれるだろう。種も少し残っているからこれは育てようと思っている。
それと注意して観察したいことが残っている。
ミミズだ。
雨上がりや曇った日のガーデンにはミミズが何匹も土中から現れている。
特に小型犬はどういうわけかそれを見つけては、身体を執拗に擦りつけ、時に食べたりしている。

ミミズがいる土は肥えた土であるといわれているし、漢方などの風邪薬にはチリュウエキスという名でミミズが処方されている。
以前ミミズ商法なるものがあったが、それはさておき生き物が土中に生息することは好ましいことであり、犬たちが反応するにはそれなりの理由があるとも推測している。

今朝、緑化計画を断念し次の方向を決めたが、柔軟に実証主義を貫き、懐と相談し、楽しみながら来春を迎えたいと思っている。
北海道はもうすぐ冬に入る。
 

ご馳走様ゴンタ 2004年10月26日(火)

  夜空の高いところに、明日は満月と思われる月が明るく輝いている。
札幌では今日初雪を観測したというが、カフェ周辺ではまだ降ってはいない。恐らく明日の朝が雪との対面になりそうだ。
そんな今夜の夕食にはビックリするような大きなマツタケが登場した。

カフェではもうすっかりお馴染みになった、頻繁お泊り犬のゴンタ君(シーズー8歳)の飼主Wさんから頂いたものだ。
今月のゴンタはその半分を我が家で暮らすことになっている。去勢していないオスにも関わらず犬はあまり得意ではないが、時たま急に一方的な恋をする。
今日のご執心は黒ラブのレオ君で、叶わぬ恋に七色の声を発してイタリア男(失礼)みたいな求愛を演じていた。

この対象が犬のうちは例え相手がオス犬であってもまだ許せるのだが、以前は多くの場合30代以下の女性であった。
「ごめんなさい。この子は若い女性を見るとこうなんです」
カフェのスタッフはこう言って、無礼に対する言い訳をしていたが、「どうして私じゃないの!私がそれ以上の年だと分かるとでも言うの!」などと憤慨してもいた。

ところが、最近では年齢制限なしの状態になり、魅力的でありさえすれば相手が男性でも恋をしてしまうゴンタにみんな呆れ気味になっている。
にもかかわらず、スタッフには見向きもしないのはどういうことであろう?

そのゴンタは今、私のベッドの上でお腹を天井に向けて大イビキをかいている。
マツタケご飯と香り高いお吸い物には満足したが、老いて益々盛んなゴンタの行為には、明日からも気を使わなければならない。

そんなことを考えながらもう一度外に出て歓喜の声を上げた!
吹雪いている!
ガーデンは一面銀世界!
ヤッター!冬だぁ!雪だぁ!
叫び終えた頃、シュンとして新潟を思った。
 

冬の入り口 2004年10月25日(月)

  「寒い寒い!今日は寒い」と騒いでいたが気温は16度もあった。強風が体感温度を下げていたのだろう。
「これから寒くなるね」と話していたら、明日の予想最高気温が8度というからちょっと思いやられる。
冬の気温がだいたいマイナス2〜3度だから、これから20度近く下がることを考えると、夏の暑さをボヤいていた私もちょっと身震いした。

冬支度は愛犬のことも考えて進められている。
雪の降り始めは犬たちが泥んこになり、日々の散歩の後が大変である。足から腹部を洗うだけでも結構な労働だ。
根雪になった後は汚れることはないが、雪球が体中に纏わりつき、放っておけば毛玉ができて、これまた後々が困ることになる。
カフェでは最近、オーダーメイドの服の注文が増えている。通販で購入してはみたが、帯に短し襷に長しで結果的に高くついてしまうらしい。
出来上がった服を着たワンちゃんが可愛く、可笑しい。
初めは固まったまま動こうとしないのだが、周囲の歓声を浴びて徐々に動き回り、満更ではない顔に変化していくからだ。
チワワなど超小型犬のファッションも防寒が主体のものに変わってきて、冬を楽しむ準備ができている。

今度の定休日には除雪機を出して整備をしようと思っている。
 

新潟中越地震 2004年10月24日(日)

  新潟中越地震で被災された方々は勿論だが、とりわけユーザーと盲導犬たちを心配している。
先程、ユーザーの会のYさんとワンボイスというボランティアグループのMからメールがあり、それぞれのユーザーの安否が知らされた。
皆無事である。

新潟市内では激しい揺れが繰り返し繰り返し襲ったそうであるが、家具が倒れることはなく今夜は通常に生活できているらしい。
長岡市は今年台風による水害で被災し、先般の23号の折も大きな被害があり追い討ちをかけるようにこのたびの地震が重なってしまった。
Kさんはたまたま娘さん夫婦が来ていたおかげで難を逃れたという。家財道具はめちゃめちゃになりライフラインもストップしたらしいが、お婿さんの車内で一夜を明かし励ましあうことができた。

Fさんとの連絡が取れていないことが気がかりであるが、彼は長岡の市議会議員であるから、災害対策で盲導犬と共に奔走しているのではないかと推測されている。

そのことを心配していたら、先のMからこんなメールが届いた。
「阪神淡路大震災の時、Nという盲導犬使用者が『妻は目が見えるさかい、可愛そうやった。停電したさかい、目明きにはさぞ不便なことやったやろ。街が壊れていくのが見えるさかい、さぞ辛かったやろ。本当にあの時ほど、見えるから辛いやろと思ったことはなかった。』と聞いたことがあり、だから新潟のユーザーも強靭な精神力で乗り切ってくれることを祈ろう」というものだった。

災害の渦中にあり、状況の把握と生活の確保に追われ、不安で居たたまれない時間を過ごしている方々に対しては、この時期に紹介するのは不適切かもしれないが、やがて訪れる復興を祈る気持ちで一杯である。

「すごい揺れが3回も続いたときは私一人でした。いつでも避難できるように、ターシャの餌と水、携帯をリュックに詰めて玄関にいました。
ターシャがいてくれたことが、一番心強かったです。」
新潟のKさんからの報告だ。
初めての経験に盲導犬も不安だったに違いないが、ユーザーがそうであったようにお互いが支えになっていたのだろう。

当事者でなく、今のところ安全地帯にいる私が、頑張っている方々に頑張れ!とは恥ずかしくて言えない。
自分にできることと、頑張っている人々の今を考えるのが精一杯である。
 

冷たい雨の日に 2004年10月23日(土)

  二日酔いなのか風邪の初期症状なのか、カフェを閉店したあたりからスッキリしない体調だ。
一応は風邪を疑い、濃厚な消毒と体内を燃焼させる処置を施している。
朝から寒く、冷たい雨と強い風が吹いていた。

「せっかくの土曜日なのに今日は開店休業か」などと思っていたら、開店直後から数組がご来店され、昼前頃からは大変賑わうようになった。

数ヶ月前に初めて来店したMダックスのロンとジュリアは、激しく吠え立て他犬を威嚇、時には噛み付きそうな勇ましさがあった。最近では、時折虚勢を張ることもあるが、かなりの自制心と他犬への友好的た好奇心が育まれ、その可愛くつややかな身体で、私たちを和ませてくれる。

8匹のチワワ軍団の中では、えくぼとあかねの威勢がよい。えくぼは力強く吠え、お母さんの下では勇気百倍のようだが、近頃は「どうやらそれはいけないこと」というのを感じてくれており、時間はかかるだろうが心開いてくれるようになるだろう。
あかねは大型犬の足にしっかり噛み付いていた。
こちらもお母さんから引き離すと、勇気を喪失し固まってしまう。私が抱き上げようとしたら、身体をうまくくねらせながら、何とか噛み付こうとする。噛まれない練習にはもってこいで、5分ほど奮闘してようやく抱き上げることが出来た。途端に大人しくなったが、身体のいろんな部分を刺激すると、ピクンピクンと過敏に反応する。
たぶん、小さい時から『掻いてやる』という魔法のスキンシップがなかったのだろう。
『掻く』という何気ない動作が犬たちの情緒を安定させる魔法のような力があることを改めて訴えたい。

初めて登場のアイリッシュセター・フラットコーティッドレトリーバーそれにラブちゃん2頭は、有り余るエネルギーをガーデンで発散し、泥んこになった後、カフェ内で静かにお店とその雰囲気を観察していてくれた。

ジャックラッセルのうらんも凶暴な?声を出しながら、大好きなボール投げをお母さんと楽しんでいたが、シャンプーをし終えたばかりのトリマーノンちゃんにはため息だったろうか?
常連の方々の愛犬たちが加わり、楽しそうな会話がカフェの時間を埋めていった。
この幸せな時がいつまでも続いて欲しいと願う。
 

小春日和のカフェ 2004年10月20日(水)

  台風の影響による南風のためか、はたまたアルコールの燃焼によるものか分からないが、室内では上半身裸になってちょうどよい今夜の札幌である。
明日の最高気温が17度の予想なので、ひょっとしたら今年最後になるかもしれない暖気の一日だった。

ガーデンでは世界最小ではないかと思われるほど小さな子を含め、チワワだけで5匹、Mダックスもその程度、その他にトイプードル・シーズー・ボロニーズ・チベタンテリア・ミニチュアピンシャー・ラブラドール・ハスキーなどがまったりとした時間を飼主の方々と過ごしていた。

思えばその中には、初めての来店当時にはワンワンワンワンと吠えつづけていた子も多い。
カフェは住宅街にあるため、ガーデンと言えども郊外にあるドッグランのように吠え続けることを容認するわけにはいかない。
ちょうど、飼主の方も吠えることで困っている方がほとんどだったので、その制御のテクニックをお教えするとすぐに犬たちは静かになってくれた。

カフェ内に入ってもBGMが静かに流れるなか、当たり前のことだが、犬たちの騒音に悩ませることなくお話をすることが出来る。

「今日で二度目の来店です。前回の方法を自宅で試したらすっかりおりこうさんになってくれました。」
「お客さんがそう話してくれたよ」と私がスタッフに言うと
「1回で直してどうする!しかも無料のカフェ会話の中で!もう少し引き伸ばせ!」と冗談めかした言葉が返ってきた。
『まあ、たまにはこんな大当たりもあるさ』と私は満更ではなかった。

明日は定休日、明後日は所用(飲み会)でこの欄はお休みです。
 

叱るということ 2004年10月19日(火)

  「叱って直るんだったら、もうとっくに直っているとは思いませんか?」
これが最近の私の口癖になっている。

叱ることを否定しているのではなく、時に必要なのだが、本当に叱ることはとても難しく、慣れていない方には的確に犬を叱ることなど出来ないのではないかと思っている。
殆どの方は、口先だけで叱るし、たまに厳しく叱る方もいるが、その叱り方とて犬を叱られることに慣らしているに過ぎない場合が多い。

叱り方をこの欄で説明するつもりはない。
「試しにやって見よう」などと思われたら、私はスポイルされた犬たちから一生恨まれるし、それは勿論望むことでもないからだ。

普通の方には叱って直すことが出来ないから、『我に返す』方法をこれまで何度も書いてきたのだが、いずれにせよどちらもネガティブだしそれで完結するものではない。

楽しいことを始めていると、人と犬が一体になって過ごす時間がある。そんな時、犬が思いがけない利口な動作を取ると、人は喜び歓喜の声を上げる。すると犬はまたその動作を繰り返し、さらに楽しい動作を見せたりもする。
いわゆる好循環であり、このようなことの繰り返しで人と犬は好い関係を築いている。
そんな時、仮に犬が「ワン!」と吠えたとしよう。
利口な飼主なら、すかさずゲームを中断し犬を『叱る』だろう。このときの叱り方は素人でも出来る強さで犬は充分反応し、繰り返す中で吠えてはいけないことを理解するものだ。ポジティブな叱りといえるかもしれない。
ところが多くの飼主は、このしつけのポイントに気付かず、「ワン」という声に犬が喜んでいると『受け入れて』しまい、後になって「家の子は要求したり興奮してすぐ吠える」と嘆くのだ。自分がそうさせていたことを忘れ、吠えるたびに無意味なネガティブな叱り方を繰り返している。

1年も叱っているのに止めないことがあるなら、もう叱るのは止めませんか?
周りの人間も自分も不愉快な気持ちになるだけですから。
きっと他の方法があるはずですよ。
 


- Web Diary ver 1.26 -