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昨日の早朝、近所に住む柴犬のしずくの飼主の方が慌てた様子でカフェを訪ねられた。 「実は昨夜、脱走したしずくが車に跳ねられてしまいました。顔面から血を流しながらも、自分で立ち上がり何処かへ走り去って行ったそうです。一晩中捜し歩いているのですが、こんな時どうすればよいのでしょうか?」 暑い日だったので傷口が化膿し、どこかで辛く苦しい時間を過ごしているのではないかと心配され、「死んでいたとしても何とか見つけて葬ってあげたいのです」と付け加えられた。横では女の子が心配そうに話を聞いていた。
動物管理センターの電話番号を教え、交番と近所のタクシー会社にも連絡するようお話した。 土曜日でもあり管理センターに通報があったとしても対応は月曜になるのが気がかりだった。
カフェのオープンまで時間があったので私も近所を探してみた。 車の通りから離れた民家の庭先や、草が生い茂った空き地を中心に血痕がないか確かめ、途中、犬と散歩をしている方にも声をかけたが見つからなかった。
昼前だったろうか、ガーデンに飼主の方が現れ「見つかりました!これから引き取りに行きます!」と先程とは打って変わった明るい声で答えてくれた。 交番に問い合わせたのが正解だったようだ。 昨夜の内に、傷ついたしずくを保護された方がいて、動物病院で手当てを施し、交番に連絡の上、自宅で一晩看病していてくれたのだという。 そこのお宅にも柴犬がいて、飼主が現れなかったら自分たちで面倒を見るつもりだったと伺った。 しずくの命に別状がなかったのも幸いだが、心優しい方がきちんと対応して下さったのが何よりも傷ついたしずくの心を癒してくれただろう。
いつのニュースだったか忘れたが、都会で傷ついた犬を何人もの人が取り囲み、そのうちの一人が「私は病院に連れて行く時間がある」というと、周りの人たちがポケットマネーで「これを治療費の一部に」とカンパしてくれたという話を聞いた。 人々の優しさは変わってはいない。素直に表現する機会が個人主義の中では見つけられないのだろう。 犬たちはこんなところでも人間の心を支えてくれているのだと感じた。
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