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カフェに併設したドッグガーデンは、予算の関係で自分たちで造成した。飲み仲間を見渡すと造園業者、重機オペレーター、機械いじりの何でも屋、それに居酒屋のマスターを筆頭とした独活(うど)の大木が揃っていた。業者見積もり百数十万を30万弱で作り上げた。しかもそれらの一部が原材料費で、当別の土、暗渠の資材、オーチャード、チモシー、ホワイトクローバーの種であり、残りほとんどは酒盛り費用だった。盲導犬協会で働いていた頃から遊び心はあったが、個人事業となると思いっきり遊べた。 それが悪かった。3月に入ると札幌は50日あまりの雪解け期を迎える。昨秋、種から芽生えたばかりの庭の牧草は雪に覆われ冬を越したが、3月下旬には泥沼になり、しかもお構いなく犬たちは走り回った。田んぼ状態である。犬たちのオーナーは始め庭に出すのをためらっていたが、最初の泥浴と愛犬の歓喜の姿を見てすぐに諦めてしまっていた。シャワーの設備を整えていたため店内の被害は最小限で済んだ。それから3週間、田んぼは畑となり、荒野となってきた。 一昨日、「近くの現場に来たから」と飲み仲間の造園業者がカフェに顔を出した。一緒に庭を歩きながら、心配げな顔をしていた私に「よぉし、これでいい。7月には立派なドッグガーデンができるぞ。グァハッハ」と言って彼は帰っていった。見渡すと、犬たちに踏み荒らされた庭に、青い芽がそこここに顔を出していた。自然の摂理に対抗して都合のよいことばかりを望んでいた自分を恥じた。 そして、どこか犬を育てることに通じるものを感じた。
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