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アモは私に似て分かりやすい犬だ。
普段は他犬とりわけ日本犬と初対面の時に『おまえ、突然飛びついたり吠えかかったりするつもりだろう』と用心深いのに、今日のお泊り犬である黒柴/宗一郎とは旧知の仲なものだから、先輩犬として鼻にもかけない。
遊ぶときは遊んで“あげる”けど、いよいよの時には“すんく”と立ちあがり威厳を見せる。 宗一郎もそのあたりは重々分かっており『へイ!承知しやした』と、その関係を受け入れているようだ。
今夕の散歩でも二人の関係を楽しむことができ、『イヌ社会』の決まりごとは『暮らしやすい家庭犬』の中でも脈々と受け継がれていることに安堵し、『やはり犬は飼い主が制御し、振る舞いを教えるのが基本』だとニヤリとした。
制御なんかしなくても生まれながらに暮らしやすいわんこはたくさんいるけど、そうじゃないわんこと暮らす可能性の方が今はまだ高い。 だから飼い主は『犬を飼育するのでなく、育てなければならない』という意識を持つ必要があり、そこに喜びを感じて欲しい。 アモと宗一郎はそんなわんこでもある。
夕食の時。 先に食べ終わったアモは、まだ食事中の宗一郎の前にあからさまに横たわった。 普段お泊り犬に対してそんなことはしないのに…
意を察している宗一郎は『ヘイ!分かっておりやす』と、まるで舎弟としての配慮を喜ぶようにトッピングの野菜一切れとフードを2粒残し親分に献上した。
『ようし、システムは正常に作動しているな』 今日の仕事を終え、満足したアモはベッドで眠り始めた。
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