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初めて犬を飼う人にも、犬育てに失敗して困っている人にも、誰にでも解るような長崎流の解説書を書けとKは言う。
犬小屋の設計図ならまだしも、生き物を育てるということは、それぞれに癖のある材木を用い、その材木と会話し知識と経験を織り交ぜながらお互いに居心地が良い家を建てるようなものだ。 神社のように宮大工が必要なほど仰々しいものではないから素人でも熱意と素養があれば立派に建てることはできる。 が、誰にでも建てれるというものでもない。
なのに多くの人が家を建てようとし、中には途中で失敗している人がいる。 そして、その失敗だってその人の人生にとっては、良いあるいは苦い思い出になったり、少なくとも経験になって人生を彩る程度のことでしかない場合が多い。 犬を飼うという事はその程度であったりする。
だから『誰にでもできる犬育ての本』なんて存在せず、仮にあったとしてもそれはまやかしで、そんな本が書店にたくさん並べられている。
Kは私が書いた『さあ始めよう!イエストレーニング』という小冊子の中味を6年後に真に理解したと言う。 理解してくれたことを私は充分に知っている。 だが自分で家を建てようとする人ならトータルすればそれぐらいの独学はしているはずだ。 「6年で理解した?結構なことじゃないか!」と賞賛したいくらいだ。
私はまた“長崎塾”において未完ではあるが『犬を育て犬と育つ』という示唆を含めたマニュアルを提供しているが、これもまた真意の理解を得るには何年かかかるだろうし誰でもというわけにはいかない。
それでもKは『ちゃんとしたものを書け』と言う。 せめて分かろうとしている人々に長崎流がもっと容易に分かるように書けと言う。
一体どうすりゃいいんだ?
座談会でも開いて疑問と問題行動が一杯の飼い主に集まってもらい、個別の質問に対して私の流儀を説明し実演し変化を示す。 『あ!それなら分かる』『うん、それならできる』と理解と評価を頂いた事柄を選んで集約する。 今流行の『選択と集中』まがいの手法だ。
ビリーズブートキャンプみたいなダイエットビデオかぁ… ・知りたいこと・伝えたいことをピックアップし ・分かりやすい言葉にして台本に落としストーリーをまとめ ・日頃行っている犬のレッスンを撮影し、その変化を時系列で示し ・基本的な考え方と技術的な要素を解説し ・注意点と問題点を具体的に洗い出し ・間違った方法とその結果を例示しながらフィードバックし正しい方法と観念を鮮明にする。
でもなぁ、千差万別十人十色の犬に対してその成果を示すには膨大な時間と映画並みの予算が必要。 やっぱ無理無理。 ちまちまとまやかしのこの欄を書くのがせいぜいだぜ。
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