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「いつもこんなに混んでいるんですか?」 生後4ヶ月のパピヨンを連れて初めてカフェを訪ねてくれた男性が私に尋ねた。 「はあ?あっ、いえいえ。最近はいつもガラガラなんですよ。今日はどうしたんでしょうかねぇ。」と、私は打ち消した。
好天に恵まれたお昼時で、言われて見れば一時的にせよ盛況だった平日は久しぶりのことである。
30年以上札幌で暮らしているが、バブルの時もそれがはじけた時も『バブルって何?はじけるってどうなるの?』というくらい、都会の景気が北海道の庶民に影響を与えることはなかったように思う。 大体がいつも不景気で、最初っからバブルの恩恵もなければはじけたショックも多くの道民には関係なかった。
それが夕張の破綻以降、灯油・ガソリンの大幅値上げ、それに伴う食料品を始めとした生活必需品の値上げと続き、ついにこの度のアメリカ発の金融危機に加えて、相変わらずの政府の無策駄策とやらで、北海道の庶民には慣れていた不景気がさらなる追い討ちをかけるようになったと実感される。
「不景気なんて別の世界の話だと思ってた」 カフェ常連のKさんが働く大手の工場が閉鎖することになって思わず漏らした言葉がそれを代弁しているように思えた。
『なんとか食べていけるだけでいい。』と昨年から定休日を二日に増やし、ペット関連メディアへの露出も控えていたカフェであるが、先月、5周年の感謝を込めて折込チラシを地域の新聞に入れた。 例年ならすぐさま反応がたくさんあったのに今回は少なかったのが気になっていた。
ひょっとしたらこのままでは『食べていくだけ』のことすらままならぬようになるかもしれない。
今日たまたま新規にカフェを訪ねてくださった方の言葉を聞き、ガーデンを無邪気に駆け回る4ヶ月のパピヨンの姿を見た。 その無礼な振る舞いを一喝するわんこたち。 さらに『うちの犬は一喝するだけならいいんですけど、幼いあの子に恐怖体験をさせてしまうかもしれないので…』とリードを付けて制御する心優しき飼い主。 そんな有意義な役割も果たしているカフェだから、もうしばらくは不景気だろうと頑張らねばなるまいと感じた。
「来て良かったです。」 帰り際に言われたその男性の一言が嬉しく感じられると共に、『もうちょっと露出しといたほうがいいのかな』 などと思った。
今夜はこんなネット広告を打っておこう。
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